中津干潟NETアカデミア

12月19日、中津市の小楠コミュニティーセンターで「第5回 中津干潟NETアカデミア」が開催されました。今年のテーマは「ごみと生きもの 川ごみ問題を考える」でした。

中津干潟アカデミアは、2018年に発足しました。主な活動として、冬に開催される研究発表会、夏に開かれる子どもアカデミアが上げられます。ただ、本来的には、中津干潟に関わる全ての人々を巻き込んで楽しく学んでいくということがコンセプトになっています。言ってみれば、ゆる~い中津干潟の仲間たちといった感じでしょうか。

はじめに、足利理事長が挨拶、続いて来賓の奥塚中津市長、助成をいただいているSAVE JAPAN プロジェクト2021-2022から損害保険ジャパン株式会社大分支店担当部長の濵岡様(VTR出演)からご挨拶をいただきました。また、粟田教育長にもご臨席いただきました。ありがとうございました。

共同世話人で、水産大学校校長の須田教授が、中津干潟アカデミアの趣旨を説明しました。もちろん、上に書いたものよりキチンとした解説です。

足利理事長あいさつです。

来賓に奥塚市長、粟田教育長にご臨席いただきました。

奥塚市長のご挨拶。

SAVE JPANプロジェクトより濵岡様のご挨拶。(VTR)

須田先生による趣旨説明。

さて、今回も研究者や学生さんの発表が中心なのですが、なんと1番バッターとして、地元の東九州龍谷高校の生徒さんたちが参加してくれました。ありがとう!しかも、今注目のSDGsの中から「海を守る32人のヒーロー」と題して楽しく学べる素晴らしい発表をしてくれました。素晴らしい!コロナが無ければ、もっと大々的に大学の先生や先輩学生たちにいろんな話しがきけるんですが、今回は空気だけでも味わっていただけたかなぁ。祈・コロナ退散!

2番バッターは、大阪南港ウェットランドグループの和田先生。またもや奇妙な生きものたちを紹介してくれました。ただし、当日は愛知県に藤前干潟の生物調査に行っておりVTRによる発表となりました。

テーマとなっている、河口などのごみと希少生物との関係を分かりやすくお話しくださいました。一見、汚かったり、無駄に見える場所に人知れず頑張って生きている貝類のお話しが中心でしたが、ほんの一例ということのようです。自然界に役に立たないものなどないのですが、一見ダメダメに見えるからつぶしてキレイな風景にしようとしてきた結果、絶滅を伴う種の減少を招いてしまっているんですね。アフリカの大自然とか、グレートバリアリーフで起こっていることじゃなくて私たちのすぐソバで起こっていることだと理解できたんじゃないかなぁ。

3番バッターは、初登場の鳥取大学から、川井田先生がヨシ原の自然のお話しです。ヨシ原には、実にいろんな生きものがすんでいます。干潟などの地べたに暮らしている生きものをベントスとか言います(正しくは底生生物だよ)。貝やカニなどがこれにあたります。

ヨシ原に行ったらわかるけど、結構泥でベタベタなところがあるんですよ。歩くのも大変なんですよ。でも、不思議な生きものがいっぱい。ヨシの枯れ草なんかは、微生物が分解していると考えがちだけど、カニが酵素を使って自分で分解することもできるんだって。何かすごいよね。あと、生きものが何を主に食べているかを「あいそと~ぷ」とかいうのを使って調べるんだって。すごいよね。

4番は、もうおなじみの大分大学の都甲先生。今回も「アカニシ」がテーマですが、本来の教育学的なところから「おおいた海の伝道師育成塾」っていう夏休みのワークショップについて発表しました。これは、毎年日本財団さんが全国的に行っている海に親しむ活動の一環で、大分県ではTOSさんが頑張っています。

で、夏に大分県下各地から集まった小学生達が、中津干潟に集まって、干潟観察やアカニシ染め体験活動なんかをやったんですよ。実は、水辺に遊ぶ会もお手伝いをしたのですよ。還元染めっていうちょっと難しい名前の染め方をすると、染液に付けた布は最初黄色なんだけど、空気にふれると一気に紫色に変わるんですねぇ。スゴイですねぇってお話しでした。

研究発表会配付資料はこちらです

東九州龍谷高校の学生さんたち。素晴らしい発表でしたよ!

和田先生の発表は、不思議な名前の生きものたち。ほぼ絶滅危惧種ばかり。

ヨシ原で暮らす生きものたちの秘めた力を解明する川井田先生。

紫色がよく似合う、都甲先生は貝紫のワークショップのご発表。

ここからは、大学生の研究発表。今回は、常連の水産大学校さんと日本文理大学さんに加えて、群馬大学さんが初参加でした。みなさん、卒業研究や修士論文の執筆にお忙しい中ほんとうにありがとう。

はじめに、水産大学校さんが、主にヨシ原の生態系についての研究を報告しました。あと、干潟に行くと分かるのですが、結構穴ぼこが空いているんですよ。そこにすむハゼの研究をしている学生さんがいて、結構レアなヤツ(そうでもないのかなぁ)についても発表してくれました。

続いて日本文理大学は、中津市の文化や歴史、自然環境などを活かしたまちづくりについて研究授業をしてるのですが、この中からの発表でした。韓国やモンゴルからの留学生も参加してくれました。干潟を活かしたまちづくりは韓国の方がはるかに進んでいるんですよ。実は。で、学生の皆さんは、マーケティングの視点や干潟をもっと知ってもらう方法についての発表をしてくれました。ありがとうございました。

群馬大学さんは、これから発表!という時にネットをつないでるルーターという機械が落ちてしまい、午後からの発表とさせていただきました。本当に申し訳ない。すみません。発表の内容は、かなり数学的というか物理的というか、はたまたスーパーコンピュータ的というような内容でした。大雨が降ったりした時の潮流の解析や川から粒子状の泥なんかが流れてきたときの様子を実験やシミュレーションを通して分かりやすく解説してくれました。

以下、水産大学校、大学院の学生さんの発表です。

     

日本文理大生はグループ発表。

こちらのグループは個別発表。モンゴルからの留学生も。

群馬大学さんはZOOMによる発表でした。遠いところからありがとう。

お昼は、これも恒例となりました「第5回 中津の海の絵コンテスト表彰式」を行いました。中津市内の小学生から851点もの作品が届きました。スゴイ数です。ありがとうございました。

式典では、はじめに足利理事長があいさつ。来賓としてTOTOサニテクノ㈱の茂木部長、教育委員会から粟田教育長のご臨席を賜り各賞選定の講評をいただきました。ありがとうございました。

最優秀賞には、今津小学校の井上幸樹さんの作品「鍋島の海の生き物観察」が選ばれた他、優秀賞、TOTO賞、教育長賞、水辺に遊ぶ会賞などの授与が行われました。みなさんおめでとうございました。

表彰を待つ子どもたちと足利理事長、来賓の皆様。

午後からは、「ごみと生きもの 川・海ごみ問題と生物多様性の関係について」をテーマにしたシンポジウムを開催しました。司会は日本文理大の池畑先生。

はじめに、水辺に遊ぶ会から、蛎瀬川のごみ問題について問題提起をさせていただきました。一言で言えば、蛎瀬川河口付近のヨシ原にゴミが堆積してしまっているんですね。これをどうにかしたいということです。

でも、この問題の理解には2つの見方が必要になると考えてます。1つ目は、誰でもすぐに理解できることなのですが、蛎瀬大橋の上から、川を見ると主にヨシ原付近に大量のプラスチックごみがあり、まぁ見た目にすごくキタナイんですね。これを見たら、何とか片付けたいと思うのが普通でしょう。

地元の方々も一生懸命頑張って片付けたりしているらしいのですが、片付けてもすぐにヨシ原にゴミがたまってしまうという悩みがあるんですよ。もう地元地区だけじゃぁ難しいので、県などの行政にお願いしたいと考えるようになっても不思議ではありません。また、ヨシ原があるからゴミが引っかかるので、ヨシ原ごと、場合によってはヨシ原が生えている土砂ごと撤去できないかということも考えられますよね。

もう一つの見方は、少々難しいです。少しばかり学ばないと理解ができないかもしれません。でも順を追って見ていけば分かると思います。さっき、橋の上から川を見ると、キタナイと言いましたが、河口や干潟などを調査研究している人にとっては、そこは生物多様性の宝庫であり、他の地域ではいなくなってしまった希少種があふれる素晴らしい場所に見えるということなんです。

何言ってんだ!キタナイものはキタナイんだよ!って言う声もよく理解できます。でも、少なくとも研究者は、同じ風景を見ていても感じられるものが違うんですね。そして、一見キタナク見えるヨシ原ですが、本当に生物多様性保全のための貴重な場所であり、実際希少種で溢れていると言います。

本当かなぁ?疑い深い水辺に遊ぶ会は、蛎瀬川河口を一緒に調査することにしました。ヨシ原に入ってすぐというか入る前にいきなり絶滅機種を見つけました。そして、確かにすごい生きものたちが次々見つかるんですね。主に貝類ということなるんですが、それ以外にみカニ類や塩性湿地を好む植物などの絶滅危惧種もたくさん見ることができました。どれもこれも、他では絶滅してしまったり、極端に数が減っていようなのがワンサといましたよ。

そしてどうも、この希少生物たちの多くが、ごみがたまるような場所を選んで暮らしているということらしいんですよね。ゴミが溜まるような場所は人間にとって景観を汚すと言うことで都合が悪いのでどんどんコンクリートで固めたりしてしまったために、結果として絶滅危惧種になってしまったということです。なるほど!

そして、この生物多様性の保全というのは、アフリカの国立公園やオーストラリアのグレートバリアリーフの問題ではなくて、私たちのすぐ側を流れる「蛎瀬川」の問題だという事なんですよ。

貝が何種類か絶滅しても別にどうということはないじゃないですかねぇ。なんて声ももしかしたらあるのかも知れません。ですが、今起こっている世界的な大絶滅について理解するようになると、その何種類というのが、世界で集めると何万、何百万という数になると言うことです。ちなみに現代生物学では数千万種の生物が地球上にいるということになっているらしいです。

事態を重く見た、国連や先進各国は、生物多様性保全を最優先課題の一つとして取り上げるようになりました。地上と海の30%を自然保護区とするという約束を日本も行っているところです。

つまり、生きもの好きの人たちが感情的に生きもののため!とか言っているのではないんですね。私たちや私たちの子や孫たちが次の時代に生き残っていくために、生物多様性保全を行わなければならないところまで来てしまっているということなんです。

こういった話しをベースに、それぞれのご専門の立場から、各大学の先生方からの発表がありました。

「蛎瀬川の生物調査・実験の現場から(川・生物)」

水産大学校 講師 南條 楠土 氏

「ヨシ原などの役割と生物多様性の視点から(川・生物)」

島根大学 助教 川井田 俊 氏

「川と海の流れの研究から(海・土木)」

群馬大学 准教授 鵜﨑 賢一 氏

「洗濯排水の視点から(被服教育)」

大分大学 准教授 都甲由紀子 氏

「多自然型河川と川ごみについて(川・土木)」

日本文理大学 准教授 中西 章敦 氏

「砂浜の生きものと海洋ごみについて(海・生物)」

水産大学校 教授 須田 有輔 氏

「希少生物の保護と現場の合意形成の視点から(生物)」

日本文理大学 名誉教授 杉浦 嘉雄 氏

興味深い、お話しがいっぱい聞けましたが、これらについては近いうちに、リーフレットか冊子にまとめてみようと思っています。お楽しみに!

 

前回のアカデミアでは、映像はかろうじて見ることができたけど、音が悪かったという反省に立って音声の準備を頑張りました。でも、HPからのアクセスが分かりにくかったとの話しも伺ったので、そのあたりを今後改善していきたいと思っています。

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