日刊工業新聞に載ったよ!

2022年10月7日付けの日刊工業新聞に水辺に遊ぶ会関連の記事が掲載されました。ありがとうございました。

環境保全、生物多様性保全と防災・減災をいっしょに考えていこうという動きで世界的に注目されています。ありがちなのは特定の生きものを守るために環境を保全しようという動きです。これはこれですご〜く大切な事なのですが、もう少し人間によりに考えてみることも大切だと思います。

生態系の持つ力をうまく引き出して人の役に立てる。そういった視点も必要だと言うことですね。私たちは「生態系サービス」と呼ばれる自然からの恩恵を全方位的に受けているのですが、普通の生活の中では案外そういったことに気づくことはありません。

例えば食料は、全て自然の産物です。「農業や畜産、養殖などは違うんじゃ無い?」という声が聞こえてきそうですが、そういったものも全て自然環境の力が無ければ成り立たないですよね。農業なんかは自然の力に少し人間の知恵を加えているだけにすぎないという考え方をした方が、ず〜っと続けられる気がしませんか。自然の力を一方的にに利用してしまうと、環境は壊されてしまって、結局そのしっぺ返しを人が受けてしまいます。経済だけに目を向けてしまうとそういったことに気づきにくいんですよね。

日本の自然災害は、これまでに無い大雨と人の間違った営みによって大きくなっています。これも短期的な経済活動や持続的で無い考え方が広がってしまっていることで起こっていることだと考えられます。過去の過ちを今、気候変動というかたちでツケを支払わされていることを考えると、次の世代に同じ思いをさせてはならないって思いませんか。

生態系サービスを利用した防災・減災については、まだまだ模索中の考え方で、いろいろと試行錯誤を繰り返す必要があります。ここで紹介されている、干潟の砂浜の力を活かした防災も全て予定通りにうまくいったわけでは無く、その後モニタリングを続けることで、修正を繰り返すことで現状を守ることができています。そうすることで、カブトガニを代表とする多くの希少生物の生活の場を守り、人々の安心安全も守れているのです。

今回は、海の生態系減災(Eco-DRR)のご紹介ということになりましたが、案外、山や川などでもこういった生態系サービスの力を活かした減災っていうのは可能だということも知っておいて欲しいです。例えば、河川堤防の外に決壊した場合の被害を抑えるための森を作るなって事が考えられます。通常は、森林の持つ生きものを育む力や人々に癒やしを与える効果、風を防ぎ、日影を提供するなどのサービスを提供しながら、河川決壊などの時には流木や巨石、土砂の流入を防ぐとかです。

山では、自伐型林業のような山を育て、土砂崩れを防ぎながら100年も経ったころには生物多様性も保全できるというようなやりかたもあります。もちろん、もっと身近な里山環境の保全活動や、田んぼによる湛水機能などもEco-DRRに入ってくると思います。

明治以降、私たちはグレーインフラとよばれるコンクリートや鉄を用いた西洋文明的な力で自然をねじ伏せようと努力してきました。その甲斐あって、元々川が氾濫してできた危険な平野部に多くに人々が住めるようになりました。でも、自然の力というのは常に「想定外」の事が起こります。だから、今、自然災害を防ぐためのインフラは「完全に防ぐ」のではなく「被害を最小限にする」ことを目標にするように変わってきました。

そのためには、インフラ整備だけで無く、人々のつながり、災害がきたときに互いに助け合う方法をもう一度考え直す時期がやってきているといえます。そして、グレーインフラの問題点も生態系壊すということだけでなく、場合によっては災害を誘発する危険についてもようやく本格的に論じられるようになってきました。

これからの人々の社会が、幸せにず〜っと続けて行くことができるような選択を私たちはしていく必要があるのだと思います。Eco-DRRという視座はその一つの手段であると思っています。

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