9月27日16:00に環境省が指定する自然共生サイト(OECM)に、中津市野依地区の「尾無(おなし)の湿地」が決まりました。正式には10月21日に認定式が開かれる予定です。指定までには、地主様をはじめ、行政の関係者の皆様、会員様など様々な方々にお世話になりました。ここにお礼を申し上げます。
尾無の湿地は一見ただの草地ですが、すごさはこの写真だけではお伝えできません!
自然共生サイトとは、国立公園や国定公園などのようにきちんと法律で定められ、開発などが制限されているような保護区ではなく、人々が暮らす中で生まれた里山的な自然をゆるやかに次の時代につなげていこうとするものです。そこには、美しい景観や希少な生物の暮らしがあったりします。OECMというのは、この里山的な自然共生サイトを世界の人々にも伝えるためのデータベースで、今後、視察や観光などにつながることが期待されています。
そもそも、なぜ自然共生サイトと呼ばれるものが生まれたのでしょうか。これは、世界のほとんどの国が参加している生物多様性条約という世界的な枠組みの中でつくられました。
その理由は、世界的に自然環境が恐ろしいほどのスピードで劣化していて、それにブレーキをかけなければ私たち自身の生活や存続が成り立たなくなるという問題をなんとかしなければならないからです。
これが、今世界中で展開されている自然環境(生物多様性)をマイナスからプラスにするネイチャーポジティブ(自然再興)という運動です。
そして、ネイチャーポジティブを実現するために2030年までに地球上の30%を保全していく30by30(サーティ・バイ・サーティ)という国際的な動きがあり、日本政府はこれを実行するよう国際社会に約束しました。つまり、日本の土地や海についても総面積の30%を保全していこうとすることになったのです。
日本では、すでに陸地の21%、海の13%余りが国立公園などに指定することで保全されています。なので、それぞれあと9%、17%の保全を目指す必要があります。しかも、あと6年余りで実現させなくてはならないということなのです。
今から、国立公園をどんどん作るということは、あまり現実的ではありません。そこで、身の回りに残されてた優れた自然を保全したり、今は失われた自然を再生していこうという考えが生まれました。手つかずの自然などというものは、実際にはほとんど存在していません。目に映る自然のほとんどが人との関係の中で生まれたものです。そして、その典型的なものを「SATOYAMA」と言う言葉で表して保全していこうとしています。SATOYAMAは、人と自然が互いに働きかけ合って安定した関係を築いている自然です。世界中で伝統的な知恵を使って同様の自然がつくられています。太古からの自然を持続的に利用するための知恵がいっぱいつめこまれています。また、里山は国際的な言葉なっていたりします。
国内で指定がはじまって2年目ですが、184ヶ所が自然共生サイトが認定されていて、今回さらに69ヶ所が認定される予定ですので併せて253ヶ所になります。申請の多くは大企業で、社有林や事業所の周辺などの自然環境が認定されています。また京都市や埼玉県、神奈川県など自治体の申請もあります。寺社仏閣などは良好な自然環境が残されていることもあって指定されています。NPOなどの団体が指定を申請している例は少なく、全体の1割もないくらいでしょうか。
大分県内は、九州電力(株)の社有林、田島山業(株)の森、うーたの会のビオトープ、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社・大分テクノロジーセンター国東サテライト、大分キヤノン(株)、そして我らが水辺に遊ぶ会の合計6ヶ所になります。
また、詳しい動きがありましたら、HPや会報でご報告しますのでよろしくお願いいたします。