終末処理場周辺水質等調査委員会

10月28日中津市上下水道部庁舎で終末処理場周辺水質等調査委員会が開かれました。この会は、基本的には下水処理場が正しく運用されているかを排水や周辺の水質などを調べて報告し、その適正運用を図ることなどを目的としている。委員は、漁業関係者、学術経験者、行政担当者などから構成されていて水辺に遊ぶ会が委員長及び議長を務めています。

今回も詳細な調査が報告され、下水処理場が適正に運用されていることが確認されました。近年瀬戸内海の水質について新たな見解が出され、水質改善から地域の実情に応じた豊かな海づくりへと変わりつつあります。中津市でも、冬期を中心に海苔の養殖に配慮して窒素などの栄養塩を基準値の範囲内で増量させて排出する措置を行っているところです。

このような措置は、海苔どころの兵庫県周辺の自治体では広く実施されていますが、周防灘西海域については、築上町と中津市に限られています。

窒素やリンなどの栄養塩を放出する措置は、言葉で言うほど簡単ではありません。そもそも、下水道はそれらの栄養塩で汚染された水を微生物の力を借りて浄化しようとして設置されていて、わざわざ栄養塩の多い排水を行うようには出来ていません。それは、制度的にも施設的にもです。

でも、一般の人々の印象と異なって、海はとてもキレイになっていることを知って欲しいです。高度成長期のように「瀕死の海」というような状況は遠い過去のこととなっているということを。むしろ、海域の栄養塩不足が指摘されていて、冬期の海苔の養殖に悪影響があるとさえ言われているくらいなのです。

ただ、だからといって栄養塩を大量に放出すれば「瀕死の海」に逆戻りすることになりかねmせん。このようなことを考慮すると下水処理施設の運用はとても難しいことが分かります。栄養塩が過剰になり、赤潮が発生しても批判され、キレイに処理しても栄養塩不足で批判されるというわけです。

もう一度、客観的視点に立ってみると、そもそも実際に海に流れ込む水の量や栄養塩の量については、下水処理施設からの排出量は自然界の山国川などから流れ出る量よりかなり少ないのです。だから、施設運用を通した栄養塩の管理は容易ではありません。海が豊かで無くなったのなら、むしろ、山、川、街など各所で、豊かな海があった時代と何が変化したのか、どうすれば改善できるのかという視点が必要になると考えます。

私たちは、近代土木や建設の技術を必ずしも否定するものではありませんが、もっと賢く土地を利用していく方法を模索すべきだとは思っています。現代のように、化石燃料を用いたすさまじい力を持つ機械やコンクリートなどの優れた建材が無かった時代に先祖たちが知恵と工夫を駆使した「伝統土木」の技が今でも大きな力を持ちうることが分かっていることから、これを援用すべきだと思っています。

効率やコスパ(コストパフォーマンス)ばかりに目をとられて、長期的視点にたったトータルでの優位性や効率についてはないがしろにされているのではないでしょうか。そういう意味ではコスパは呪いの言葉だと言えるかも知れません。

重機をあえてつかわないで手作業で100年、時には1000年もつような構造物を自然の力を活用して実現する方法が確立しつつあります。そういった、手法は「自然再生型土木」などと呼ばれている。といっても、そのほとんどは私たちの先祖が試行錯誤の上見いだしたものです。ただ、私たちはその価値を捨て去り、忘れてしまっていただけなのです。

この自然共生型土木の技術を用いれば、自然破壊活動ととられがちな現代土木をむしろ環境を保全する方向に変えられる可能性があります。そうすれば、土木作業は破壊活動ではなく自然を創造する仕事として、若者や働く人たちが、変な後ろめたさを持たずに生き生きと働くことがができるようになるのではないでしょうか。結果として、働く人も集まり、中山間地域の産業としても今以上に大きな意義を持つことが出来る。そうしたことの積み重ねで、結果として豊かな海が戻ってくるのではないかと考えます。

中津干潟の保全ひがたらぼの日々カテゴリーの記事