スナメリ Finless Porpoise 科名 ネズミイルカ科 学名Neophocaena phocaenoides
スナメリは最も小さなクジラ・イルカ類の1種である。船の激しい航行に慣れている中国の揚子江のスナメリを除いて、一般的に臆病な性格でほとんどの海域で接近することはむずかしい。大変活動的な動物で、普通、水面のすぐ下を突然跳び出すような動きをしながら、泳いでいる。陸から遠く離れたところでは見られず、きわめて浅い潮干帯でも生き残る能力がある。この生息域に分布するネズミイルカ類は本種のみで、唯一球根状のメロンを持っている。カワゴンドウに形態が似ているが、本種は短い背ビレをしている。小さいベルーガにも似ているが、分布範囲は重なってはいない。英名のBlackPorpoiseやBlackFinlessPorpoiseは誤った名前であり、体色は死んだ後に黒くなるだけである。初期の記載は、生きた動物よりもむしろ死んだ個体によっていた。しかし、体色は年齢とともにわずかながら黒くなるようだ。本種は南アフリカで集められた標本によって記載したが、これはおそらく誤ってラベルされたものであろう。
●別名 ブラック・ポーパス(BlackPorpoise)、ブラック・フインレス・ポーパス(Black Finless Porpoise)、チアンツー(Jiangzhu江豚)


行動
水面に浮上するとき、ほとんど水面を乱さない。片側に回転する傾向がある。呼吸は速く続けて3,4回行い、約1分間潜水し、そしてかなり遠くに再び浮上する。頭は完全に持ち上げ、少なくとも体の一部を水から出して、時にはスパイホッピングを行う。飼育下においては、空中にジャンプするように訓練することができるが、自然の下ではブリーチングはめったに行わない。幼獣は母親の背中に乗るとき、母親の背中の隆起につかまって、母親が呼吸のために水面に現れたとき幼獣も水面に出てくる。


分布
専門家によれば、中国の揚子江、日本と朝鮮半島の周辺の沿岸海域、およびアジアの他の地域の沿岸と河川の3つの区別できる系統群がある。最近、ラオスで発見された。おそらくオーストラリア北部にも生息しているであろう。地図で示したより北部の日本(本州の北端)に出現している。本種は主要な沿岸種の1つであるが、海水にも淡水にも生息する。暗く濁った状態を好むようで、海岸から5キロメートル以上沖ではほとんど出現しない。温暖な河川や湖(もし川がつながっていれば)、マングローブ湿地、入江、デルタ地帯、潮の入る沼沢地で見つけることができる。河川水が海水と接する場所が最も多く見られるところである。えさの状況によって回遊する個体があるように思われるが、その動きはよくわかっていない。


同定のチェックリスト
●背ビレはなく、背に隆起がある
●淡青灰色の体色
●小さい体
●流線形の体
●小さい頭でくちばしがない
●丸い前額部
●水面を乱さない
●曲芸的でない
●通常単独あるいは小さい群れ

三百間の浜に打ち上げられたスナメリ、後ろはゴミ処理場

撮影 浦 畑 一 久

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