コンクリート文明の黄昏

いや〜大上段なタイトルですが、最近読んだ『土中環境』にインスパイアされ、出てきた言葉です。これまでもなんとなく、コンクリートが自然環境を悪化させているよなぁ〜とか感じることはあったと思います。ですが、この本を読むと、なんと言いますか、ビルや橋、巨大な港とか想像しなくても、家の庭、裏山、道路等々細々した場所のコンクリートがいかに山を壊し、川を痛め、私たちの安心安全さえも時には壊してしまっていることに気づかされます。

本来、防災を目的に作られた設備が、むしろ災害を誘発している事実も分かります。でも何より興味深かったのは、今まで目に映っていた風景が、ガラッと変わってしまった点にあります。

先日電車で大分市方面に向かったのですが、車窓に映る緑の木々の見方が変わっていることに気づきました。ヤブ、ここもヤブ、これもヤブ、里の木々が皆「林」や「森」ではなく「ヤブ」になってしまっているのです。

林、森、ヤブ、って何?ということから考えなきゃならんのですが、ここでは、ヤブは入りにくくトゲやツルだらけで気分が悪い場所、林、森は入り口はともかく入ったら心地よい場所、くらいに考えておくのがいいなぁ。

その、ヤブの多くは、人間(少なくとも近代の)が作ってしまった自然だということです。これが、国内の環境問題、自然災害問題と直結しているんですなぁ。驚きでしょ。

コンクリートってとても便利で、頑丈で素晴らしい素材です。でも最大の欠点とも言えるのが、生物環境を受け入れず「劣化する」点です。どんなものでも劣化するのがあたりまえじゃん!というかもしれませんが、伝統知の世界では、むしろ新しいものが時間を掛けて、手を加えてどんどん良くなっていくというものがあるのです。ここが根本的な違いだと思います。

コンクリートは新品の時は思ったような機能を発揮するけど、劣化すると全然ダメ。逆に伝統知による土木工事の多くは年月を掛けむしろ安定したり丈夫になったりする。なぜかと言えば、そこにある自然の力をうまく活用してるからです。土の中のカビの仲間の力を借りたり、木の力を借りたりということですね。

生きものは水の流れを作り、空気の流れを作ります。自分たちが生きていくためにその場所を安定させようとする力を発揮します。結果として、人も、自然も調和のとれた状態になっていく。

でも、そうするためには作法があります。もう、私たちがほとんど忘れてしまったやり方ですね。遺跡などにそのあとが残されていたりします。山仕事を代々されているかたとかには技法が伝わっていたりもします。

ある時代に、古い考えだとか、現代的でないという言葉でか片付けられてきたことです。でも、今SDGsとかサステイナブル(持続可能)とか言われる時代になってきました。ドンドン成長するのではなく、成熟し、継続的にやっていく時代がやってきたのです。どんどん大きくなれないと言って悲しむ必要はありません。ようやく、私たちは、本当の意味で安全と安定を手に入れるチャンスがきていると考えるべきでしょう。

イケイケどんどんの時には、短期的にしか持たないコンクリートをじゃんじゃん使えば良かった。でも、これから、たかだか40〜50年でボロボロになる素材に頼るのでは無く、土木工事完成と共に成長をはじめる伝統知による土木技術を援用する仕組みを社会の中に組み込む必要があると考えます。それなくしては、奥山から、川から、谷から、平野から、海から、修理修理修理の連続時代がやってきます。そしてそれは、マイナスの持続可能ということになりかねません。きりが無いのです。

伝統知による、環境改善は、市民が誰でも簡単にできるような内容です。ただ、手間はかかります。そして、ずっと見ていく必要があります。大規模なことはする必要は無いのですが、その土地を育てていくという視点が必要になります。

今、各地で「想定外」の雨や風が大災害の原因とされていますが、もう一度考えてみると、そもそも安心安全な山がほとんど無くなっていることに気づかなければなりません。奇妙に聞こえるかも知れませんが、平野に移り住み、快適な生活を得た人々が一番危険なことになりつつあります。だとするならば、自分の命や財産は自分たちが守るという視点で、みんなで山を生き返らせる活動をするべきではないでしょうか。

しかもそうすることで、公共施設の大規模改修をする必要も少なくなり、文化財を守り、自然の力を回復させ、ひいては海の環境まで改善できるかもしれません。山林と里山、そして私たちの庭を改善することで、災害に強く、自然豊かな古里が作れるのです。しかも、一人一人が、少しずつ土仕事をすることによって。

このあたりのことは、もう少し煮詰めて、今後も考えて行きたいと思います。ともかく、これはチャンスだと思いますので、今後の展開をご期待下さい。

まずは、大新田の松林からいろいろ考えてやって行きたいと思います。乞うご期待!

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