ボランティアの成果

ボランティア活動の成果についてのご報告

水辺に遊ぶ会では様々なアクティビティを実施しています。生きものや地元文化の調査、環境教育、自然観察会の開催、海産物消費の振興、松林の保全活動、ビーチクリーンなどが主なところです。これ以外にも会の運営に関わる事務作業、標本などの収集、生きものや干潟にまつわる文化などについての情報収集など対外事業以外にもいろいろな活動をしているところです。

そのような多様な活動を続けられているのは、多くのボランティアの支えがあってこそだと日頃より感謝している所です。ここでは、その活動の一端をご報告させていただきます。


学生ボランティアに感謝

中津干潟にはいろんな大学の先生や学生たちが調査活動のためにやって来ます。下関の水産大学校の学生さんたちは調査に来る度に普段は出来ない力仕事やペンキ塗り、清掃活動、魚食推進活動など実に多岐にわたる仕事していただいています。測量などをしている日本文理大学の学生さんたちもイベント行事の時には力仕事から接客、運営などにも関わっていただき、いつも大変助かっています。また冬の「野依新池」の保全活動には2大学に加え、九州大学の学生さんも参加してもらっています。同池は希少種ベッコウトンボの発生地として知られています。

大学生たち若い人の協力は会の運営にも良い影響があります。各大学の先生方はいつも学生を率いて奮闘していただいています。そこには、先生同士、学生同士の出会いや思わぬ情報交換なども行われたりしています。これらの活動が、中津干潟を一つの媒体にして研究や教育に役立ってくれることを願っています。


渡り鳥調査活動

中津干潟はシギやチドリ、カモ類など多くの渡り鳥にとって重要な中継地となっています。長年の地道な調査の結果その重要性が全国的に注目されるようになってきました。一般に干潟での鳥の調査は、その広大さ、鳥の数の多さなどから非常に困難だとされています。鳥に詳しい人達にとっても、かなりハードルの高い作業であると言われます。

そのような中で毎年複数回にわたって大阪の「NPO法人南港ウェットランドグループ」の専門家の方々による調査がボランティアで二十年近く続けられています。その同定能力、カウントの正確さは国内の専門家の間でも広く知られているところです。同NPOの皆様は中津干潟の重要性を高く評価していただいており、これまでに多くの新事実を明らかにしてきました。近年周辺の干潟環境が劣化する中、中津干潟の重要性が増していることも、これらの正確で、地道な調査活動の結果分かってきたことです。

2017年にはこれらの研究成果を『中津干潟シギ・チドリ類レポート2016』として共に上梓したところです。中津干潟の価値を当会同様に高く評価し、保全の重要性を理解するパートナーとしてこれからもいっしょに活動して行きたいと考えています。よろしくお願いいたします。


大新田松林の保全活動

中津干潟のほぼ中央に広がる海岸が大新田の浜です。大新田地区は江戸時代中期頃に干拓された土地ですが、それよりはるか以前から松林が広がっていたと考えられています。その風光明媚な白砂青松の風景は1970年代頃を境に次第に私たちの生活から離れ始め、今世紀に入る頃には数百年続いてきた松林は低い広葉樹に覆われた藪(やぶ)になってしまいました。

2013年から当会では、雑木の繁茂による松林の劣化を食い止める活動を開始しました。藪と化した海岸林地帯には不法投棄や防犯上の問題も発生し、人が海に親しむ海岸部の都市公園としての機能を失っていました。干潟保全を主とする当会ですが、干潟のエントランスである松林を保全することで、より多くの人々に干潟に来ていただきたいという思いもあり作業をづづけています。

松林の復元については異論もあります。ヒトが自然に対して出来るだけ手を付けずにおくことこそが重要だという考えがその代表的なものです。手つかずの自然こそが自然であって、人間がいじった自然は本当の自然では無いということだと思います。確かに説得力のある意見ですが、日本中の森林や台地、平野、海岸林などを見つめ直すと、そのほとんどが人間と自然との関わりの中で作り出されたものであることに気付かされます。

その代表とも言えるのが里山です。私たちの先祖は時に豊かで、時に荒ぶる自然とどのように関わるべきか千年以上にわたって考え、行動して来ました。海岸にある松は自然に生えたものもあるかも知れませんが、ほとんどは人が植え守ってきたものです。海からの風や砂、塩害から防ぐために植えられたものです。津波等の大災害の減災の機能も持つと言われています。海岸のような荒れた土地に高さ15mを越え、真っ直ぐ地下深くに根を張る植物は松しかないと言われています。外来種等が蔓延する状況の今となっては、ただ森林を放置しても元通りの豊かな自然に戻ることはないと考えます。日本に本来自生した豊かな森を求めるにしても人による管理がどうしても必要になってきますし、それもまた容易なことでは無いでしょう。

また、松林は日本人の原風景の一つであり、文化的にも景観的にも重要であると考えます。中津の住民にとっても懐かしい「浜遠足」の場所でもありました。大分県北部で子ども時代を過ごした40才以上の人々の多くがこの浜遠足を経験したものと思います。浜まで歩いて、砂にまみれて相撲をとったり、宝探しをした経験があるのです。残念ながら現在の子ども達はそのような経験は出来ていません。前世紀までに廃れてしまった行事だからです。松林と時を同じくして。

大新田海岸は長さ3㎞にわたっています。干潟保全を目的とする一団体だけではとても保全作業を実施できる広さではありません。そこで、そのごく一部ですが区域を決定して作業にかかることにしました。地権者や行政機関、そして多くのボランティアの方々のご協力があってはじめて実現できる活動であると思いながら始めさせていただきました。雑木の伐倒、玉切り、搬出、下草刈り、草寄せなど非常に大きな労力を必要としました。当初は、作業方法まだもはっきりしておらず大変な苦労をボランティアの皆様におかけしました。毎回、汗まみれ、泥まみれの作業でしたが、TOTO㈱及び関連会社の従業員の皆様を中心に多くの市民の皆様には大変お世話になりました。

その活動の結果も影響してか、2016年秋に大規模な松枯れが発生した折には、ボランティアの皆様が作業した区域より東はほぼ全滅しましたが、それより西側には広がりませんでした。他の要因もあるかもしれませんが、松が健全に育つ環境を作り続けた事も良い影響を与えたのかも知れません。今も松枯れの脅威は続いていますが、人が手を加え続ける事で被害を軽減できる可能性も見えてきました。

これまでの作業の結果、藪化した松林も3年あれば、白砂青松に近い状態まで復元できることが分かりました。一度ある程度復元できれば、年3回程度の草刈りと草寄せ作業、定期的な松葉かきをすることでその状態が維持できることも経験として理解できました。今後は市民の皆様と対話をしながら中津干潟の海岸林についてどうすべきかを問い、行動していきたいと考えています。


ビーチクリーン

1999年の当会発足以来続けているのが中津干潟の海岸清掃活動です。大新田で年3回、山国川に近い三百間で年1回ビーチクリーン活動を行ってきました。活動をはじめた頃は、非常に多くのゴミに驚き、悩ませられました。しかし、活動を続けていく中で、賛同者も増え多くのボランティアの方のご協力も広がりを見せるようになり作業時間も短縮され、海岸も見違えるように美しくなりました。

特に大新田の海岸は渚付近は台風などが無い時はほとんどゴミらしいゴミも見なくなりました。もっとも海岸林の隙間には今でもゴミが隠れていますし、時折不法投棄された粗大ごみを見かけることもあります。また夏期には若者の花火の跡なども見られます。それでも通常はほとんどゴミは見なくなったことも事実です。これも毎回参加いただいているボランティアの方々の力の賜と思っております。

三百間の浜は冬期に年1回ビーチクリーンを行っています。範囲も広く回数も少ないことから毎回多くのゴミが集まります。大新田は駐車スペースの確保が比較的容易ですが、三百間の浜は周辺に駐車場になるスペースがほとんどありません。毎回参加していただけ方や駐車場整理等のボランティア様にはご苦労をかけているところです。

三百間の浜には塩性湿地に適応した生きものたちが多く生息しています。植物群落も独特のものが見られます。毎回のごみ拾いでそれらの生きものたちが暮らす環境にも良い影響を与えています。今後とも多くの皆様のご協力をお願い申し上げます。