水辺に遊ぶ会が目指すもの
▼遠い昔、縄文時代、古代中津人は河口のアシ原で巻き貝を拾い、遠浅の干潟で二枚貝や魚を捕ってくらしていたことが、沿岸の貝塚などからわかっています。弥生時代には、稲作の傍ら、粘土質の泥をこねて小さなつぼを作り、野焼きして海に沈めるイイダコ壷漁なども盛んに行われていました。戦後の食糧難の時代を支えたのもこの豊かな海でした。干潟で捕れるアサリやハマグリで、多くの人が生命をつなぎ、海沿いの道は捨てられた貝殻で一面真っ白だったと聞きます。
海岸を臨む松林に出かけた春の浜遠足、ザルを片手に夕飯のおかずを捕る人、風呂やかまどの焚き付けに松葉や流木を拾い集める子どもたちの姿…。遠い昔からほんの数十年前まで、中津の海と人は仲良くくらしてきました。ところが時代が豊かになるにつれ、人々の足は遠のき、いつの間にか海と浜は忘れられた存在になり、人気がなく、ごみが捨てられた海岸は「行ってはいけない場所」になってしまいました。
▼この干潟に目が向けられたのは、中津港が重要港湾に指定された1999年。「必要ないから埋めてしまえ」といわれた大新田の干潟に、おっかなびっくり足を踏み入れた時、手のひらに乗る小さなカブトガニを見つけました。地面近くしゃがみこんで周りを見渡すと、無数の生きものたちがうごめき、干潟は彼らの小さな声と生命であふれていました。
▼この驚きと感動から、私たちの活動は始まりました。この時の感動は、今も私たちの活動の原動力となって、心に息づいています。私たちの祖先が大切につきあってきた身近な海や水辺の自然をきちんと見つめ直し、自分たちのくらす中津の海や水辺の未来を考えるため、私たち海辺にくらすものは、もっともっと海のことを知る必要があるのではないでしょうか。
遠ざかってしまった「海と人の心の距離」を取り戻し、中津の海や水辺と人々のくらしをつなぎ直すために、私たちは活動を続けています。
水辺に遊ぶ会が取り組んでいる事業
みんなおいでよ中津干潟
福岡県豊前市から大分県国東半島にかけて広がる広大な豊前海干潟の中央に位置する中津干潟は瀬戸内海最大の干潟です。ここをフィールドに、泥んこになりながら地域の自然を再発見し、豊かな海と自然環境を未来に残すため、様々な活動を行っています。
ずぼっとはまって干潟あそびは楽し-観察会
活動のメインは自然観察会。びちゃびちゃの干潟に初めて入る時にはへっぴり腰の子どもたちも、ほんの数十分で歓声をあげて遊びはじめます。足下の小さな生命のつぶやきに気がついてしまったら、もうアナタは中津干潟のとりこ。干潟にはフシギがいっぱいです。
べんりな世の中のひずみを見る-海岸漂着ごみ
年4回実施する海岸清掃と漂着物調査。海岸には社会を反映する様々なごみが流れ着きます。これって黙々と拾うだけでいいのかな?というギモンから、漂着物調査も行っています。「楽しくなくちゃ続かない」をモットーに、漂着ごみ不思議コレクションも収集中。
にんきものはカブトガニ-環境学習・啓発活動
中津干潟のアイドルは、なんてったってカブトガニ。でも、その他にもスゴイ生きものがいっぱいいるんだよ。中津の海、もっともっと好きになってね。ということで、オリジナルアヤシゲ教材を抱えて、お呼びがかかればどこまでも! 出前講座に出かけます。
あやしい干潟調査隊が行く-調査研究活動
普通の人だってやればできるんだぞ!という自信をもってばく進中の「あやしい干潟調査隊」。泥をほじくり続け、干潟を走り回って20年。次々と不思議な生きものを発見し、無名だった中津干潟を「干潟界の大スター」へと変身させた功績は大きいのです。
そんけいするのは漁師さん-干潟漁業との連携
中津ん潟んこと一番よう知っとうのは漁師さんじゃけぇ、やぁっぱ漁師さんとは仲良うせんとね。ということで漁業体験や魚食推進も手掛けてます。子どもたちに中津の漁業を知ってもらうことも海を守るための大事な要素です。
ぶんかや歴史は大切な海の記憶-郷土史調査
じいちゃんの記憶の中の海や、一枚の写真が語る海、工夫を重ねた漁具などを発掘して記録に残すための活動も実施中。お年寄りとお茶のみ話に花を咲かせるのも楽しい時間。
かんがえよう干潟のこと-博物館「ひがたらぼ」
せっかく集めた情報はたくさんの人に伝えないかんが、中津には博物館や大学がないんだよー。てなわけで小さな干潟の博物館「ひがたらぼ」を作っちゃいました。みんな遊びに来てね。
いじょう、お気楽ゴクラクな水辺に遊ぶ会でした
青い空の下、カブトガニがのんびり這う中津干潟に遊びにきませんか。
活動実績
自然観察会
干潟生物・川の生物・アカテガニ・ズグロカモメと冬鳥・ベッコウトンボ・野依新池のトンボ類など
主催事業
シンポジウム・学習会・指導者講習会・写真展・映画上映会など
調査研究活動
生きもの調査(底生生物・カブトガニ・アオギス・鳥類ほか)・地形調査・環境調査・水質調査・ヒアリング調査・漂着物調査・生物目録作成など
受託事業 ・舞手川河口環境モニタリング(2005年~2010年/大分県)
・植野貝塚貝類同定・沖代条里生物調査(2012年/中津市)
・野依新池生物調査(2015~2023年/中津市)
・中津干潟調査(2018〜2023年/中津市)
調査研究協力(2023現在) NBU日本文理大学・下関水産大学校
九州大学・群馬大学・長崎大学・日本大学・日本トンボ学会・琉球大学・バードリサーチ
環境学習のサポート
環境学習の講師(干潟・河川・廃棄物ほか)
自然観察の指導(干潟・河川・トンボほか)
小学校(中津市)小楠小学校・沖代小学校・北部小学校・豊田小学校・南部小学校・鶴居小学校・今津小学校・如水小学校・和田小学校・樋田小学校・上津小学校・三郷小学校・山移小学校・深水小学校・秣小学校(大分県内)伏木小学校・四日市小学校・臼野小学校・本郷小学校・長峰小学校・長洲小学校・横山小学校・天津小学校(福岡県)西友枝小学校・三毛門小学校・南吉富小学校・吉富小学校・山田小学校・黒土小学校・宇島小学校・唐原小学校・角田小学校・八屋小学校・椎田小学校
中学校・高校(中津市)中津中学校・豊陽中学校・東中津中学校・耶馬溪中学校・本耶馬渓中学校・緑ケ丘中学校・今津中学校・中津南高校・中津北高校・東九州龍谷高校(その他)真玉中学校・吉富中学校・築城東中学校・宇佐北部中学校
保育園(中津市)愛光保育園・如水保育園・中津市民間保育園連盟
大学・短大(中津市)県立工科短期大学・東九州短期大学(その他)NBU日本文理大学・別府大学・大分大学・九州大学・水産大学校・APU立命館アジア太平洋大学・東京海洋大学・群馬大学・日本大学・長崎大学・熊本市立大学・法政大学・国連大学校
社会教育 日田市立博物館・県立香々地青少年の家・ボーイスカウト・ガールスカウト・緑の少年団・社会福祉協議会・中津市歴史博物館・教職員研修・公民館教室や生涯学習などの社会教育の場ほか
山国川学習館(現山国川資料室)
国土交通省山国川河川事務所委託事業(2004年~2008年)
海岸清掃・漂着物調査
年4回実施 大新田海岸2000年~現在 三百間海岸2010年~現在
協力団体 ルネサスセミコンダクタパッケージ&テストソリューションズ・TOTOグループ・中津急行・川嶌整形外科・大分県自動車整備振興会中津支部・あいおいニッセイ同和損保大分県支部・B&G・ダイハツ関連会社・
漁業体験ほか水産振興に関わる活動
タコツボ体験漁・海苔漉き体験・お魚ホネホネ教室・囲い刺し網体験・地魚料理教室・干もの教室・海苔巻き教室・ササヒビ再現
大新田松林原風景再生活動
大新田海岸の松林の再生活動
協力団体 TOTOグループ・県立工科短大・水産大学校・NBU日本文理大学・中津市理容業協会・あいおいニッセイ同和損保大分支部・大分県森林ボランティア・小楠小学校
野依新池ベッコウトンボ保全活動
ベッコウトンボの生息地のヨシ等の伐採
協力団体 水産大学校・九州大学・NBU日本文理大学
中津干潟アカデミア
研究発表会(一般対象) 中津ひがた子どもアカデミア(子ども対象出張博物館)
協力団体 水産大学校・九州大学・NBU日本文理大学・大分大学・群馬大学・県立工科短期大学校・島根大学・中津南高校・中津少年処女発明クラブ・豊前理科学会
その他ボランティア活動
東日本震災東北被災地への漁船の提供・釜石のNGOとの交流支援
九州北部豪雨災害耶馬溪被災地ボランティア
受賞歴
- 「海の日」国土交通省九州地方整備局長賞 (2005年 国土交通省)
- ふるさとづくり大賞振興奨励賞 (2005年 あしたの日本を創る会)
- みどりの日環境功労者 環境大臣賞 (2006年 環境省)
- 海岸功労者表彰受賞 (2010年 全国海岸協会)
- 世界湿地賞ブルーグローブ賞 (2010年 世界湿地ネットワーク)
- プロジェクト未来遺産登録 (2011年 日本ユネスコ連盟)
- 手づくり郷土賞 国土交通大臣賞 (2012年 国土交通省)
- 沼田眞賞 (2014年 日本自然保護協会)
- ごみゼロおおいた功労者賞 (2014年 大分県)
- 大分合同新聞社賞 (2014年 大分合同新聞社)
- 第34回豊かな海づくり大会農林水産大臣賞(2014年 農林水産省)
- 大分県森林づくり活動功労団体表彰 (2016年 大分県)
- 山国川の環境学習活動 感謝状 (2017年 国土交通省)
- 「海の日」国土交通大臣表彰 (2019年 国土交通省)
- 中津市長表彰 (2019年 中津市)
- 大分県知事功労表彰 (2019年 大分県)
- 九州地方整備局国土交通行政功労表彰感謝状(2020年 国土交通省)
- 日韓国際環境賞 (2020年 毎日新聞社・朝鮮日報社)
- 大分合同新聞文化賞 (2020年 大分合同新聞社)
- 地域再生大賞 優秀賞 (2021年 共同通信社・全国地方新聞)
- 日本水大賞審査部会特別賞 (2021年 日本水大賞委員会・国土交通省)
- 緑綬褒章 (2023年 内閣府・国土交通省)
テレビ番組(主なもの)
- NHK大分「おおいた美の風景(中津干潟)」 (2004年 )
- NHK総合「さわやか自然百景(中津干潟)」 (2005年)
- 大分朝日放送地上デジタル記念「豊なる干潟」 (2007年)
- NHK教育「ど~する地球の明日」 (2007年)
- BSアサヒ「にほん風景遺産-中津干潟」放送 (2009年)
- NHK総合・九州・沖縄「自然体験アドベンチャー 未知なる大分の海」(2019年)
- NHK総合・九州・沖縄「ウオカツ 豊前海のハモを応援」(2022年)
他団体との協働事業
- 中津港大新田地区環境整備懇談会(中津の海と人を考える協議会)設立(2000年~現在)
- 「みんなの海 いのちあふれる豊前海干潟展」大分県立博物館共催(2006年)
- ササヒビ復元事業(水産庁 環境生態系保全活動支援調査実証事業)
(大分県漁協中津支店ほか協働)(2008年) - 環境省里海創生事業対象地に選出(2008年)
- 水産庁環境生態系保全活動支援推進事業
(中津干潟保全の会 大分県漁協中津支店協働)(2009~2013年) - 水産庁水産多面的機能発揮対策事業
(中津干潟を元気にする会 大分県漁協中津支店協働)(2013~2014年) - 地域を担うNPO協働モデル創出事業(2015〜2018年)
- 海と日本プロジェクト協力(日本財団・TOS)(2021〜2022年)