豊かな海づくり大会実行委員会

10月3日午後から大分市で、第43会全国豊かな海づくり大会実行委員会の第1回総会がありました。この催しは昭和56年に第1回の大会が大分県で開かれて以来、概ね全国を一巡し再び大分の地で開かれることとなったものです。開催は、令和6年度で、今年は兵庫県、来年は北海道で行われます。

大会趣旨には「魚食大国である日本の食卓に、安全で美味しい水産食料を届けるため、水産資源の保護・管理や湖沼・河川の環境保全の大切さを広く国民に訴えるとともに、つくり育てる漁業の推進を通じて、明日のわが国漁業の振興と発展を図る事を目手ににする。」とあります。

大分大会実行委員会の基本方針は4つあります。①水産資源の保護と管理の一層の推進 ②森から川、海へとつながる豊かな自然環境の保全 ③四季折々の多様な水産物の消費拡大 ④おんせん県の新たな魅力を全国に発信 がそれです。

このうち、水辺に遊ぶ会としては①と②がより気になるところですね。水産資源の保護、管理は未来に繋がるサステイナブルな漁業を行っていく部分としてはとても大切なことです。でも、100年近く前から資源管理の重要性は叫ばれつつも実際の実現にはいろいろと越えなくてはならない課題があることも事実です。同じ一次産業でも、林業や農業のように決まった土地でずっと施業する業種とは異なり、解放された場所での捕獲採取型の業態であることから、その土地を大切に使い続けることがより難しいと言えます。北欧の事例や、ITの活用など現代社会に合わせた管理が求められるもかも知れません。ただ、何よりも海を生業とする人たちが、海の自然の恵みに感謝し、その豊かさは何によって保たれているのかを考える事が求められるものと思います。

②は、まさに生態系サービスの問題です。水辺に遊ぶ会は、山、川、池、里、海と一つの集水域(流域)をテーマに啓発・保全活動を行ってきました。海は、様々な自然の営みや人間活動の結果が集約されて現れる場所なのかも知れないと常々感じている所です。なので、山の自然の状況、川の状態、里の活動などにいつも目を配るようにしています。近年山は、皆伐施業がすすめられ、私たちの目のつかないような所で荒れてきているようです。山からの土砂が流出するようになると河床が上がり、川の自然が失われると同時に災害を誘発しかねません。山や里、海岸にはソーラー発電所の設置が進み、これも自然にあまりいい影響は与えません。人々の安心・安全のためと旧来からのグレーインフラによる施業が続けられていますが、少し遠回りで困難さはつきまといますが、グリーンインフラ、Eco-DRR(生態系減災)などの導入が広くもとめられるところです。

また、海洋ごみの問題も無視できません。2050年には、これまでに海に流れ出たプラスチックゴミと海の魚の重さを越えるとの試算も報告されています。50年前は世界で2000〜3000万トン程度だったプラスチックの生産量は、今恐らく5億トンを越えているものと思われます。まさに桁違いの量が作られているのです。便利なものなのですぐに捨て去ることはできませんが、減らす努力はできると思います。事実川ごみの調査では、様々なプラスチックごみが増える中で、レジ袋だけは減少したことが分かっています。有料化の影響で消費量が減ったことが主な原因だと考えられます。人々の意識を変えることや政策でプラスチックごみの量は減らすことができるのです。

県のレベルでは、今、川ごみを処理する予算が管理する土木事務所にはありません。ですが、海ごみの80%は陸由来だと言われます。その陸のゴミの多くが川を通じて海に流れます。何とか、川の段階でプラスチックごみを改修できないかと模索している最中です。海に出たごみをひろうよりは、効率的なような気もしますがいかがでしょう。

総会で、質問や意見を聞いていただけると言うことで、少しお話をさせていただきました。海で漁や養殖などをしている方なら多くの人が知っている「森は海の恋人」という言葉を入り口に、山(森)と川と海は一体としてつながっており、海は海だけで豊かな自然を享受できているわけでは無いことことをお話しさせていただきました。現代の科学の言葉では「生態系サービス」ということができます。山の森が豊かで健全に保たれた結果、川にも魚やカニなどの幸があふれ、その豊かさは海にもつながるということです。

経済であれ、文化であれ私たちの活動は全て自然を基盤として成立しているという事実があります。人間活動によって痛めつけられた自然を再生することが結果として私たち自身の利益として帰ってくるという事実をもっともっと人々に知ってもらいたいと考えています。そもそも環境保全と経済活動は必ずしも対立する考え方では無いという深い理解があって、はじめて次の時代の私たちの暮らしが成り立つものと考えます。そして、その多くは私たちが西洋文明を知る前に古代から営々と築いてきた暮らしの中に数多くのヒントが隠されていることも是非知っていただきたいと思います。今全国各地で、昔の手法を現代の目で見つめ直し、時代に合わせた形で経済活動や環境改善に取り組んでいる人々や団体が数多くあります。これらの動きは、少しずつかもしれませんが私たちの次の世代の幸せにつながるものと考えます。

何故か広瀬知事の真正面、かつ真後ろの席になっておりました。おかげで質問がとてもしやすかったです。ありがとうございます。

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